鵺(ぬえ)~源頼政弓張月の対峙~西成岩地区西組敬神車
演目
鵺(ぬえ)~源頼政弓張月の対峙~
製作者(人形師)
九代玉屋庄兵衛
製作年
平成19年9月
由緒
題材は、敬神車の最も古い壇箱の鵺退治の彫刻にちなんで製作しました。また笛太鼓で無く琵琶と語りで演ずる形式も非常に珍しいものです。これも敬神車上山の枡形の彫刻に琵琶を演奏する女姓が彫られていることにちなんでいます。
上演ストーリー
物語の内容は平安時代の末期、源氏と平家の盛衰を描いた平家物語の第四巻鵺の章より抜粋して演じます。
京都御所に出没する物の怪に天子さまが、夜な夜なうなされ、伏せがちになり薬や祈祷も効果がなく、武士の中より源頼政が選ばれ昇殿し退治する事になりました。猪早太という郎党を従え弓矢を持ち参内した頼政は、黒雲の中に怪しい気配を感じ、矢を射ると何かが落ちてきた。猪早太が短剣でと止めをさすと顔は猿、胴体は狸、尾は蛇、手足は虎という得体の知れない生き物であったという話です。
所作・動き解説
家来から頼政への矢の受け渡しがうまくいくかどうか、そして矢が見事鵺に当るかどうか、まるで生きているかのような鵺の激しい動き、そして最も注目していただきたいのが鵺の尾である蛇の動きです。そろばんの玉のような木の組み合わせと鯨のひげと糸使いによる変幻自在の動きはこのからくりだけに見られるものです。家来により止めを刺された鵺が生き絶える場面で終了。
口上文
人知れず大内山のやまもりは
時は
近衛天皇は夜な夜な夜毎
正体不明の妖怪に怯え
魂奪われ気絶も
高僧、貴僧の効験も、霊験あらたかな神仏も、
されば源平両家の中より
変化の
兵庫の
山鳥の
南殿大床に
時や遅しと待つほどに
黒雲ひと群 たて来たり
頼政きっと見上ぐれば
雲の中に妖しき姿
頭は猿
尾は
して鳴く声は
恐ろしなんどもおろかなり
これを射損ずるものならば
世に在るべしと思わざる
「南無八幡大菩薩」と 心の中に祈念して
よっぴいて ひょうと射る
「得たりおう」と
早太見事に討ち取ったり
上下の人 手に手に灯をともいて 頼政ぞ
「ほととぎす 名をも雲井にあぐるかな」と詠まるれば
頼政さっと袖広げ 「弓はり月の射るにまかせて」